外国人と同行していると、訪れた場所について素直な反応を見たり、感想を聞いたりすることが多い私たちです。日本人にとっては当たり前でも、外国人にはナゾだったり不思議だったりすることは、外国人から教えてもらって初めて気が付くこともあります。

現場を経験してきた通訳案内士ならば、おそらく何度も現場で聞いてきたであろう外国人の生の声はこれ。

日本では現金が無いと何も買えない! という、嘆きなのか、半ば愚痴にも聞こえるご意見です。

支払い方法が現金のみというお店が多いことに、外国人は驚きを隠せないようです。あらゆる分野で最先端の技術を競っているであろう日本で、どうしてキャッシュレスにならないのか? と不思議に思われているようです。

最近では、日本での現金以外の決済のバリエーションも増えてきましたが、来日されるお客様の母国と比べると、圧倒的にキャッシュレス決済の割合は低いようです。

実際の現場の話として、昨年の秋に、現金を1円も持って来ていない中国人観光客がいました。日本ではクレジットカードもスマートフォンも使えない、現金払いのみのお店もまだまだたくさん有り、その中国人は結局その夜、ラーメン1杯さえも買えなかったそうです。

また、ある中国人観光客は、「中国ではお金の支払いは全部これだよ。」とスマートフォンを指さして言いました。これはもう2年くらい前のことです。

今回は、中国語圏でのキャッシュレス事情、特にデジタル貨幣についてのお話です。

デジタル貨幣とは?

中国の国内での買い物には、もはやスマートフォンが欠かせません。モバイル決済もいろいろとありますが、「アリペイ」や「ウィチャットペイ」がよく使われているようです。スマホさえあれば、送金や振込も手軽にできる時代になりました。

そんな中、最近「デジタル貨幣」が話題になっています。デジタル貨幣とはデジタル通貨とも表現されていて、いわゆる中国の通貨である人民元の電子版のことです。

価格変動が激しいビットコインなどの仮想貨幣ではありません。国の法定貨幣で、現金と同じ効力があり価格が比較的安定していると紹介されることもあります。

デジタル貨幣は2014年から研究開発が始まり、2017年に国務院(中国の中央政府の呼称、日本の内閣に相当)が中央銀行と商業銀行が共同研究することを承認しました。デジタル貨幣は現金に取って代わるのでしょうか?


デジタル貨幣の英語表記は?

デジタル貨幣は英語でdigital currency、略してDC, または digital currency/electronic paymentDC/EPと表記されていることも。他にもいろいろな表現があります。

中国の政府系シンクタンクである、国家金融・発展実験室の研究員によると、電子マネーは銀行口座で決済されますが、デジタル貨幣の場合には、スマホの「デジタル財布」にお金が入っていれば、銀行口座を紐づけしなくても使用できるようになるとのことです。

そして、Wi-Fiなどのネット環境が無くても、スマホの電源を入れて、払う側と受け取る側のスマホをお互いに軽く触れ合わせれば、お金のやり取りができるというものです。「電子マネースリ」や「スキミング」といった犯罪に対しても、新しい技術を使っているので安全とも言われているようです。電子マネーに慣れている中国人は、それほど抵抗なく使えるのではないでしょうか。

どうしてデジタル貨幣なのか?

紙幣や貨幣を作るのはそれなりのコストがかかります。紙代、印刷代、金属の材料代、加工代、さらにそのお金の輸送代、現金の管理にもお金がかかります。その点、デジタルはそれらのコストがかかりません。また、デジタル化されることで、通貨の履歴が残ることになり、税金の手続きが容易になるのではとの期待が持たれています。

先行してすでに深圳、成都、蘇州など5か所で実証試験が始まっています。例えば、蘇州市の相城区(上海蟹で有名な陽澄湖がある所)では、5月から区や企業において一部の従業員に支給する給料の通勤手当の50%をデジタル貨幣で支給すると、メディアで報道されました。


将来的には、現金紙幣や貨幣はどうなってしまうのか?

「デジタル貨幣の機能と属性は紙のお金と全く同じで、その形態がデジタル化しただけです。中国の国土は広く、経済発展のレベルも様々で、各地でそれぞれの習慣も異なるので、短期的にはデジタル貨幣を全面的に普及させることはありません。デジタル貨幣が完全に現金に取って代わることはないのです」と国や銀行の幹部は言っています。

この 「完全に取って代わることはない」 というところがポイントでしょう。”現金は少しは残しておくけどね、大部分はデジタル貨幣になるかもね” という意図が汲み取れます。

お支払いはアリペイ?ウィチャットペイ? いえ、私はデジタル貨幣で。

将来、このようなシーンが日本でも現実になるかもしれません。中国人観光客はアリペイやウィチャットペイを使うので、日本でも会計端末に、これらの決済アプリを導入し始めていますね。それに加えて、次は中国の人民元のデジタル貨幣もプラスされる日が来るのでしょう。

デジタル貨幣については、私たちが得意としている分野、インバウンドの現場での外国人の使用状況などについて、また新しい動きなどについてもレポートしたいと思っています。

少し時間はかかりそうですが、またいつか来たる日のために、現場にも外国人にもやさしい、インバウンド対応のメソッド「おもてなし術」をおすすめしたいです。

外国人接客のポイントをおさえるだけで、外国人対応のストレスが軽減されて、とてもラクに接客できるようになる方法を、ぜひお試しください。

引き続きオフラインの研修も対応していますので、お気軽にご相談くださいね。中国語圏での最新情報などもその都度ご紹介したいと思っています。

今のうちにできる対策をして、来たるべき時に備えておきましょう。


インバウンドファクトリー 中国語圏マーケットスペシャリスト
中国語講師
由良知子